毎度おなじみのことだが、今回も出演者で冷静な発言をしていたのは太田光氏、杉村太蔵氏のみだった。
ほかに発言したのは以下の4名である。
- 党派性の強い有田芳生氏
- ネット民の代弁者として名高いデーブスペクター氏
- 人気ソフィストのひろゆき氏
- 反統一教会の筆頭である鈴木エイト氏
やる前から太田氏に不利となることが予想できる偏った人選なのだが、TBSは視聴者に太田光への集団リンチを見せたかったのだろうか?
長年MCを勤めている太田氏を思いやる気持ちが少しでもあるなら、大衆受けを狙う発言が多くなったひろゆき氏ではなくホリエモンや三浦瑠麗氏などきちんと大衆批判できる人物を呼ぶべきだろう。
さて今回も例のごとく、メディアの偏った報道とそれを鵜呑みにした大衆によって生まれる全体主義を危惧する発言をした太田氏と杉村氏。
彼らの主張はある程度法律や宗教などの歴史について知識があるからこそ出てくるのだが、ネットを見ているとそれが理解できない人間のほうが多数派のようだ。
それどころか「知識がないからこんな発言をするんだ」という完全に逆の発想をしてしまう。
多くの者にとって“知識”とはワイドショーやSNSなどで目にする偏った断片情報を指す言葉なのだろう。
一方の有田氏は、太田氏の言っていることを理解できないのかあえてなのか、論点とは全く関係ない被害者エピソード(これがまた感情論好きな大衆からの共感を誘う)を長々と語りだす。
その内容は太田氏もとっくに知っているものなのだが、途中で口を挟むなと再三言われている手前、話を中断させる訳にはいかない。
有田氏はさすが元国会議員だけあって、自分を弱者の味方であるかのように見せるのが非常に上手い。
ネットのコメントを見てみると、案の定、彼を正義の代弁者だと勘違いした人間が大勢いるのが見てとれる(彼らのやり口こそ典型的なカルトのそれなのだが)。
デーブ・スペクター氏も彼に追従し、太田氏に感情的なコメントを浴びせる。
「太田さんはもっと勉強したほうがいい。知識不足なんですよ」
傲慢至極な発言だ。
一方で太田氏は鈴木エイト氏、有田氏、紀藤弁護士、(その他何名かいたが忘れた)などが執筆した本をすべて読んだという。
人は一般的に自分が読んだ本の主張に流されやすい。
だが太田氏には彼らの本を読み切った上でなお、今の主張をするだけの論拠があるのだ。
(太田氏に「知識がない」と言い放つ人間のなかに、日頃から太田氏より本を読み、彼らの本をすべて読み通した人間がどれだけいるのだろう?)
これに対しデーブ・スペクター氏は怒りをあらわにしながら畳み掛ける。
「ミヤネ屋や昨日放送したTBSの報道特集見ましたか?見たらそんなこと言えませんよ!」
まるで金スマを見た直後の視聴者のような、”識者”のセリフとはとても思えないピュアな発言である。
仮にもコメンテーターとして飯を食ってる人間が、TBSの特集やミヤネ屋の偏向報道で語られる内容を鵜呑みにしているのだ。
あの放送法違反だらけのミヤネ屋の報道に何の違和感も抱かないというのは、コメンテーターとしていかがなものだろうか。
さらに耳を疑うような発言が続く。
「白か黒かでカンタンに解決できるような問題ではない」
と述べる太田氏に対し
「黒とハッキリ言える問題なんですよ!」
と断言してしまう。だめだこりゃ。
ふだんから物事を深く考える習慣がある者ほど、世の中には黒か白かで断言できる問題などほとんどないことを熟知している。
逆に何でもかんでも白黒つけたがるのは、物事を深く考えることができない人間に共通する特徴だ。
こう言っちゃなんだが、昔から彼の発言はそのへんのネット民が発信する感情論と大差がない。
(だからこそ共感を得るのだろうが……)
「外部のよく知らない人間が口を挟むな」
「何十年も問題に取り組んでる人が言ってるんだから……」
そう言って紀藤弁護士、有田芳生氏、鈴木エイト氏などの言ってることを無条件で信じる人間がいる。
だが何十年も同じ問題に取り組んでる人間だからこそ、そこに偏よった思想や見落としが生じるのだ。
とくに前の2人は党派性の強い人間なので、話半分に聞いた方がいい。
終盤では日本を代表するソフィストのひろゆき氏から驚きのコメントが飛び出す。
杉村太蔵氏が「メディアで白黒つけるのは非常に危険」と述べたことに対し、「政府が動かないんだからメディアが動くしかないじゃないですか」と返すひろゆき氏。
メディアが黒と言えば世論も黒となるこの国で、その思想がいかに危険であるか?
ある程度の知識があれば分からないはずはないと思うのだが……
しかしワイドショー教会にすっかり洗脳され、論理ではなく雰囲気で物事を判断するネット民には、有田氏、デーブ氏、ひろゆき氏が正論を述べているように見えるらしい。
彼らはワイドショー教会の教義に少しでも異論を唱える者がいれば、「あいつは悪魔の味方だ!」と鬼の形相でそれを排除しようとする。
そしてその行為を正義であると確信し、自らの言動に一切の疑問を抱かない。
その姿はまさにカルト信者そのものであり、ナチスドイツの全体主義を彷彿させるものでもある。
今回のサンジャポでは、太田氏の主張に反対であることが明白な人間が多めにキャスティングされた。
さらに番組のなかで、SNSに書き込まれた太田氏への大量の批判を本人に直接見せつける。
つづけて「被害者を助けるために奮闘する正義のヒーロー」のように国民に印象づけられた有田氏、エイト氏、デーブ氏の3人で太田氏を責める。
同時にSNS上でも太田氏に対して無数の攻撃的コメントが書き込まれる。
なんと惨いことをするのだろう。
杉村氏がいたからまだ良かったものの、彼がいなければ完全に集団リンチだった。
ネット民に理性的判断ができないのはいつものことだが、TBSは彼への集団リンチが行われることを事前に十分予測できたはずだ。
公共の電波を使ってイジメを放送するのはどう考えても“善くないこと”のように僕には思えるのだが……
おそらくこの文章を読んだ者のうち何人かは「イジメと批判は違う」と思うだろう。
太田が公共の電波を使っておかしな発言をするのが悪いのだ、と思うだろう。
これはまさにイジメっ子が「あれはイジメじゃない」というのと同じ発想である。
「イジメられるほうに原因がある」という、いつも彼らが批難している意見と同じである。
そもそも批判をするにも最低限の知識や思考力が必要であり、それを持たぬ者が“批判”だと思って発信してるものは単なる悪口や暴言にすぎない。
百歩譲って仮に太田氏の主張が間違ってるとしよう。
それでも集団で一人をよってたかって批難しているのを見たら「さすがにかわいそうだな」とか「もうこの辺にしておこう」という気持ちにならないのだろうか?
そうした集団リンチに平然と加わってるような人間が、別の場面では「イジメはダメだ!」「被害者の気持ちを考えろ!」なんて言ってるのを見ると反吐が出る。
現在進行系でイジメに加担してる人間が何を言ってるんだよ。