バイクといえばすり抜けを思い浮かべる人も多いのはないでしょうか。とくに朝の通勤ラッシュの時間帯などには非常に多くのすり抜けバイクを目にする機会があります。
そんなバイクのすり抜けですが、法律的にはどうなの?違法じゃないの?って疑問に思う人も多いと思います。
そこで今回は「バイクのすり抜けは法律的に違反なのか、それともセーフなのか」ということについて話していきます。
また、記事の後半ではバイクですり抜けをする際に気を付けたいことなどを解説していきます。
バイクのすり抜けは法律では違反?
バイクのすり抜けはずばり違法なのでしょうか?結論から言うと違法ではありません。
というのも現時点ではバイクのすり抜けそのものに対する法律というものは存在しないんですよね。
また、あまり目にすることは少ないですが、道路の中には「二輪停止線」というバイク用の停止線が引かれているところもあります。この停止線は車の停止線よりも前方に引かれていることから、すり抜けは国からも認められていると考えてもよいのではないかと思います。
ただし、すり抜け自体は違法ではないですが、すり抜けの方法によっては他の道路交通法に触れてしまう可能性もあります。
よくあるバイクのすり抜けのパターン
すり抜けの方法によってほかの道路交通法に触れるとはどういうことなのでしょうか。
とりあえず良くあるバイクのすり抜けパターンを4つに分けました。
では順にみていきます。
車の左側からすり抜け
左側からのすり抜けは原付でよく見かけるもっともポピュラーなすり抜けだと思います。左側からのすり抜けは前を走る車が走行中か停止中かによって違反か違反でないかが変わってきます。
まず、前の車が走行中の場合、左側からのすり抜けは違反です。
というのも道路交通法によって
道交法第28条
1:車両は、他の車両を追越そうとするときは、その追越されようとする車両(前車)の右側を通行しなければならない。
と規定されているからです。
つまり車を抜く際は車の右側から抜くというのが法律なんですね。まあ法律は別にしても走行中の車を抜くのは危ないんでやめたほうがいいです。
一方、信号待ちなどで車が停止している場合は左側からのすり抜けもOKです。というのも、停止している車を抜くことは追い抜きや追い越しには当たらないので、とくに法律で禁止されているという事はないのです。
車と車の間をすり抜け
2車線以上ある道路では車と車の間をすり抜けていくバイクもよく見かけます。
これは法律的に違反なのかというと正直グレーゾーンです。というのも真ん中の線を踏むかどうかによって違反かどうか変わってきます。
真ん中の線をまたぎながら走行した場合、道交法53条の合図不履行などにあたる可能性があります。
道路交通法第53条
車両(自転車以外の軽車両を除く。)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。
要するに車線を変えるときはウインカーを出せってことですが、真ん中を走りながらラインをまたぐたびに合図をしっかり出してるライダーはほぼいないのではないでしょうか。
一方、下の図のようにラインをまたがずに走行できれば違反ではありませんが、全くまたがずに真ん中を走行するというのもなかなか難しいのではないかと思います。
とはいえ、車線をまたいだから即違反で捕まるという事は現在ほとんどなく、警察にも黙認されているのが現状ではないでしょうか。ただし絶対に捕まらないとは言い切れないので注意です。
また真ん中のラインが黄色い線の場合は追い越しのための進路変更が禁止されているため、線を踏んだだけで一発アウトというケースも多いようです。
反対車線にはみ出してすり抜け
ときどき反対車線にはみ出してすり抜けをするライダーを見かけます。
しかし反対車線にはみ出してすり抜けをすることは逆走に当たり、法律違反です。これは見つかったら捕まる可能性が高いし、なにより対向車線と正面衝突する可能性があるのでとても危険です。
ちなみに道路交通法第17条では以下のように書いてあります。
車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
なんかごちゃごちゃ書いてありますが、要は車両は全部左側通行だってことです。
走行中の車の間を縫うようにすり抜け
下の図のように走行中の車の間を縫うようにすり抜けするライダーも割とよく見かけます。
これは道交法第26条の「みだらな進路変更」に当たる可能性が高く違反であると同時にとても危険な行為なので絶対にやらないようにしましょう。
道路交通法第26条
車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
バイクのすり抜けで法律違反になるその他のパターン
上に挙げた以外にもすり抜けで違反になるパターンがあります。
停止線を越える
よくあるのが信号待ちの車をすり抜けて一番前に出た時に停止線をはみ出してしまうパターン。停止線をはみ出してしまうと「信号無視」で違反になってしまう可能性があります。
とはいえ停止線をはみ出しているのはバイクだけでなく車にも多いので、ちょっとはみ出したから即捕まるという事も少ないとは思います。まあそれでもなるべく停止線ははみ出さないようにした方が無難でしょう。
路側帯をすり抜けする
基本的に車両が路側帯を走ることは法律で禁止されています。
ただし路側帯でなく車道外側線の場合は走っても問題ありません。車道の左端にある線を全部路側帯だと思っている人は結構多いですが、その半分以上が実は「車道外側線」と呼ばれるものです。
路側帯と車道外側線の見分け方は歩道があるかどうかですね。下の写真のように歩道が別にある場合は車道外側線になります。
一方下の写真のように歩道がない場合、これは路側帯になります。路側帯の内側はたとえ前の車が停止中であっても走ってはいけません。
バイクのすり抜けはやっても問題ないのか
ここまですり抜けに関して法律的にどうなのか語ってきました。やり方さえ気を付ければ法律的にはセーフだというのが結論です。
しかし法律的に許されているとはいえ、危険性やマナーなどの問題からすり抜けには賛否があります。
僕個人の意見としてはバイクですり抜けをやるのはありです。ただし僕が推奨するのはあくまで安全な範囲内でのすり抜けです。先に挙げたような走行中の車の間を縫うような危険なすり抜けはやるべきではないと思っています。
僕自身、あまりすり抜けをするタイプではありませんが、状況によってはすり抜けをすることもまれにあります。
僕がすり抜けをする場面
僕は基本的にはすり抜けはせずに車の後ろに並んでいますが、以下のような場面では安全を確かめた上ですり抜けを行うこともあります。
渋滞がひどい時
渋滞があまりにひどいときはすり抜けを行うこともあります。
「すり抜けをしても到着時間はそう変わらないのではないか?」
という意見を持つ方もいますが、おそらくそれは都市圏の渋滞を経験したことのない人の意見でしょう。
都市圏では渋滞に付き合っていたら本来1時間で着くところに2時間以上かかってしまうというケースも珍しくありません(実際何度も経験しました)。それほど昨今の渋滞はひどいです。
なので渋滞の程度によっては安全を確認したうえですり抜けを行う場合もあります。
前を大型のトラックなどが走行していて前方が見えないとき
前をトラックなどが走っていると前方が全く見えないので信号が変わっても気づかなったりして危険なんですよね。
なので状況によってはすり抜けをしてトラックより前に出ることはあります。
後ろの車がやたら車間を詰めてくるとき
バイクってけっこうあおられやすい乗り物なのであおってきたり、車間をかなり詰めてくる車もたまにいます。
こうした場合、もしちょっとでも接触したら我々ライダーは大けがになってしまいます。なのでその危険な車と離れるためにすり抜けをして前まで行くこともありますね。(状況によってはその車を先に行かせることもあります。)
バイクですり抜けをする際に気を付けたいこと
ここからはバイクですり抜けをする際に気を付けたいポイントを紹介します。
すり抜けを行うのは車が停止中のとき
すり抜けを行うのは車が信号待ちなどで停止している時にしましょう。
逆に車が走行中に抜くのは危険です。というのもウインカーを出さずに進路変更をする車やふらふらと走る車も多いですし、接触したときのリスクもかなり大きいです。
また、急に抜かれた車のドライバーがびっくりして事故を起こしてしまうという事も考えられます。
すり抜けの速度はかなりゆっくり
すり抜けを行う際は速度をかなり落とした状態で行いましょう。
たとえ前の車が停止中であっても突然車のドアを開いたり、歩行者が車の間を横断したりという事も十分あり得ます。また、道路にひびなどが入っていてすり抜け中にバランスを崩してしまうという可能性もあります。
なのですり抜けをする場合はいつでも止まれるような速度で走ることが大切です。
すり抜けを行う前に必ず後方確認をする
すり抜けを行う前には必ず目視で後方確認をしましょう。というのも後ろから別のライダーがすり抜けをしてきているケースがよくあるからです。
後方確認をしないとこの後ろから来たバイクに気づかず衝突してしまう危険があります。実際、僕も後方確認をして初めて後ろからバイクが来ているのに気づいて「ビクッ」とした経験は何度もあります。
後方確認をせずにすり抜けをしようとしていたらおそらくぶつかっていたことでしょう。
きわどい時はやめておく
すり抜けをしようとしたときにスペースが狭くて
「これイケるかどうか微妙だなあ…」
という場面も結構あると思います。
そういう場合はやめておきましょう。そこで無茶してミラーでも当ててしまったらえらいことになってしまいます。
行けるかどうか迷ったら我慢しましょう。
- すり抜けは車が停止中に行う
- すり抜けの速度はゆっくり慎重に
- すり抜け前の後方確認は必須
- きわどいときは我慢
まとめ:バイクのすり抜け自体は法律的にはセーフ
まとめるとバイクのすり抜けは正しいやり方をすれば法律的にはセーフです。
ですが、法律で禁止されていないからと言ってむやみにすり抜けをすることはおすすめしません。むやみにすり抜けをすることは危険も多いし、こころよく思わないドライバーも多いからです。
なので状況に応じて必要なときのみ安全なすり抜けをするようにするのがベターだと思っています。