このブログでは割と好意的に取りあげることの多いホリエモンだが、ここ最近は共感できない発言が増えている。
もちろん以前から口の悪さに引くことはあったし、発言の2割ぐらいは共感できないものもあった。
たとえば以下は2022年にYoutubeでホリエモンが発したセリフだ。
「ワクチンを打つ打たないは個人の自由だ」なんて言ってる人は本当に社会からいなくなって欲しい
https://www.youtube.com/watch?v=VmQkm5M0nP4、6分10秒ごろから
これは「全体の利益のためなら個人の意志は無視してかまわない」と考える全体主義的な思想であり、まったく共感できない。
同調圧力に反するところが彼の魅力の一つなのだが、この発言では完全に同調圧力に加担していた。
また最近やたらと「境界知能」という言葉を(対象を揶揄する文脈で)多用していることにもドン引きしている。
ほかにはChatGPTなど最先端技術に関する発言も、科学への信仰が行き過ぎている印象だ。
とはいえ基本的には合理的で世論に忖度しない人物なので、その発言にスカッとすることは少なくない。
言い方に問題があるにせよ、その内容の8割は同意できるものである。
なのでトータルでは好印象を持っていた。
しかしだ!
最近のインボイスに関する発言はさすがにヒドすぎやしないだろうか?
一応動画を載せておくが、見る価値はないので下にまとめた引用だけ読んでほしい。
「たいしたクリエイターじゃないのにクリエイティブの世界に身をおいて悦に入ってるけど、(お前らは)安いから雇われてるだけなんだよ」
「デモとかしてる暇あったらもっとお前ら自分のスキル磨けや」
「インボイスで消費税も払えねぇ奴らなんてさ?お前らのは仕事じゃなくてただの道楽だからな?」
「(インボイス反対運動をしている人は)そんな暇があったら、もっと自分を磨いて売上を上げられるようにすりゃいいじゃねえか」
「(インボイス反対案に)署名した人は情弱」
またホリエモンは元部下の炎上芸人が投稿したツイートを引用し、「その通り」とつぶやいている。
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) September 26, 2023
たかが、インボイス導入ぐらいで、未来を失われるような才能なんか、クソ二流三流だわ。
これはビジネス的な成功者にありがちな特徴なのだが、「稼ぐ能力の高い人間=価値のある人間」という価値観がホリエモンの根底にもあるように思える。
以前話したように向上心と差別心は表裏一体なため、彼もそうした差別意識を大いに持ち合わせているのだろう。
だがこの価値観はボクにはとても受け容れられない。
たとえ今や誰もが知っているような人気アーティストであっても、そのほとんどが売れない下積み時代を経験している。
彼らの多くは人気ドラマなどのタイアップがきっかけで偶然火がついたのだ。
売れる前の楽曲と売れたあとの楽曲を比べてみても、クオリティ自体に大きな差はない。
つまり売れるかどうかは実力以外の偶然要素が大きく関わっているのである。
だから今売れていないアーティストが今売れているアーティストより才能や実力で劣るとは限らないし、今後なにかのきっかけで突然火がつく可能性だって十分考えられる。
そもそも「人気がない=才能がない」というのも間違っており、作品の価値は支持者の数で決まるわけではない。
多くの人には響かなくてもごく少数の人間にだけ深く刺さる作品はある。
生前には評価されなかった作品が、死後になって評価されることも少なくない。
音楽に限らず、マンガも映画も文章もお笑いも、あらゆる創作がそうだ。
人間にしても友人やフォロワーの数でその人の価値が決まる訳ではないだろう。
スキルを磨けというが、一体なんのスキルを磨くのだろうか?
創作の世界は技術があるからといって売れるものではない。
大衆に媚びて好感度を高めるスキルを磨くのか?
それとも情報弱者を騙して稼ぐスキルを磨くのか?
YouTubeの現状を見ても分かるように「人気がある=質が高い」とは限らない。
むしろ下衆向けのゴシップネタや迷惑動画、情報リテラシーが低い人間向けのコンテンツほどアクセスが集まりやすい傾向にある。
ブログにしたって今儲かっているのは嘘を平気でつける人間や、他人の不幸をネタにしている人間がほとんどだ。
サラリーマンにしろ、お調子者ほど上司に媚を売って出世するし、優秀な営業マンには嘘をつくことに抵抗のない人間が多い。
ビジネス的な成功者の多くは税金を多く払っていることを誇らしげに言うが、その金はおもに情報弱者を騙して稼いだ汚い金じゃないのか?
ゴミ清掃やコンビニ店員、介護、トラックドライバーといった彼らの見下している仕事に就いている人間のほうが、よほど価値のある仕事をしているんじゃないか?
アーティストにはサラリーマンに向かない(いわゆる)社会不適合者が少なくない。
「他の仕事をやれ」なんて軽々しく言うが、それができない、あるいは精神的に大きな負担になってしまう不器用な人間も多くいるだろう。
それは決してその人が無能であるからではなく、人には向き不向きがあるという、ただそれだけの話に過ぎない。
そしてそういう性質を持った者にしか創れない作品もたくさんあるのだ。
そうした背景の中、これまで上手くいっていた生活がインボイス制度によって脅かされる可能性があるんだから、当事者が反対するのは自然なことだろう。
左翼系の活動家が気に入らないのは理解できるが、今回反対しているフリーランスや個人事業家は右派左派関係ない。
たまたま左翼系の活動家が便乗しているだけだ。
ギリギリの経済状況で創作活動をしているクリエイターを「情弱」や「才能がない」と切り捨てるのは、あまりに傲慢すぎるように思える。