ほんの少し勇気が足りなかった

勢いよく窓を開けた。

足を半分だけ外に出した。

やれ!

やっちまえ!

両足を窓から出した。

脚だけ外に出して窓の枠に座っている状態だ。

生まれて初めて屋根の瓦に足を乗せた。

屋根の瓦は冷たい。

砂がついてるのかザラザラしてる。

高鳴る胸の鼓動が止まらない。

左手はギュッと窓のふちをつかんでいる。

離せ。

左手を離せ。

だが怖い。

あと一歩が踏み出せない。

このまま手を離せば少しは後悔するだろうか。

一生後悔させてやりたい。

左手を離した。

瓦の上に2本足で立つ。

一歩二歩、足を前に進める。

すぐさま窓の枠につかまった。

脚はブルブルと震えている。

なにやってんだ、あと少しじゃないか。

あと少し勇気を出せば楽になれる。

あと一歩足を前に踏み出せばクソみたいな人生から解放される。

何も失うものなんてない。

この世に未練が残るような存在はどこにもいない。

誰からも愛されずに存在を否定され続けて育った人間の哀れな末路だ。

この高さでも頭から落ちれば一発でイケるはずだ。

しかし恐怖だけが必死に反抗する。

あとほんの少し心に風が吹けば、ここから飛び降りれる。

・・・結局吹いたのは臆病風だった。

あとほんの少しの勇気が俺には足りなかった。

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